事業紹介

姿勢を支える机と椅子がeスポーツ中の認知機能とゲームパフォーマンスを高める

株式会社オカムラ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役 社長執行役員:中村 雅行)は、
国立大学法人筑波大学との共同研究により、机や椅子で姿勢を支える環境が、eスポーツ中の気分や認知機能、ゲームパフォーマンスに影響することを示しました。
立位や前傾座位には序盤の認知機能とゲームパフォーマンスを高める利点があり、後傾座位には長時間のプレー後に認知疲労が生じにくい特徴があることが分かりました。

配信元:株式会社オカムラ (2026/10/01)
人類はしゃがんで休む姿勢に適応してきましたが、現代では椅子に長時間座る生活による身体や認知機能への負担が課題です。
立位には健康・認知面での利点が知られていますが、eスポーツ中の姿勢を支える環境の役割は不明でした。

本研究では、日常的にゲームを楽しむ若年成人男性25人が、最大3時間バーチャルサッカーをプレーする際に、天板の高さを調整できる昇降デスクと、背もたれ・座面の傾きを調整できる椅子を用い、実験1(10人)では立位と通常座位、実験2(15人)では前傾座位と後傾座位を比較しました。
各実験においては同じ参加者が二つの条件でプレーを別日に行い、順序は無作為に決めました。

実験1では、立位で序盤に活力が高まり、認知課題での妨害刺激による反応の遅れ(干渉時間)が短くなりました。
シュート数や成功率も通常座位より高まりました。
一方、1時間後には通常座位より疲労感が強く、干渉時間も長くなりました。
開始1時間後以降には、10人中5人が疲労や脚の不快感でプレーを中止しました。

実験2では、前傾座位で後傾座位より活力が高くなり、シュートやパスが増えて攻撃的なプレーが促進されました。
また、1時間後の干渉時間が短くなりました。
一方、3時間後には認知課題の正答率が後傾座位より低くなりました。
後傾座位では正答率の低下は認められませんでした。

これらの結果から、立位や前傾座位は短時間の認知機能とゲームパフォーマンスを高め、後傾座位は認知機能の持久性を支える姿勢として活用できる可能性が示されました。
目的や時間に応じた姿勢環境の設計が、デジタル活動時の認知パフォーマンスと健康の両立に役立つことが期待されます。

【研究代表者】
筑波大学体育系 松井 崇 准教授
株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 浅田 晴之

【研究の背景】
人類はしゃがむなど筋活動を伴う姿勢で休息してきました。
一方、現代では、仕事や学習、ゲームなどで椅子に長時間座る生活が広がり、身体や認知機能への負担が課題となっています。
特にeスポーツ注1)では、認知機能の中でも、不要な情報の影響や不適切な反応を抑え、状況に応じて判断する「実行機能」注2)を長時間働かせる必要があります。
短時間の立位には認知機能を高める利点が報告されていますが、長時間続けると疲労や不快感が生じます。
そこで本研究では、机や椅子の設定によって姿勢を支える「姿勢環境」に着目しました。
天板の高さを調整できる昇降デスクで立位を支えるとともに、背もたれだけでなく座面の傾きも調整できる椅子を用い、身体全体の前傾・後傾を支える環境をつくりました。
こうした姿勢環境が、eスポーツ中の気分や実行機能、シュート数やパス数などのゲームパフォーマンスに及ぼす影響と、その時間的な変化を調べました。

【研究内容と成果】
日常的にゲームを楽しむ若年成人男性25人を対象に、二つの実験を行いました。
実験1では10人が立位と通常座位で、実験2では別の15人が前傾座位と後傾座位でプレーしました。
前傾座位では座面を含む椅子の傾きを前方に10度、後傾座位では座面・背もたれを後方に23度に設定しました。
各実験では、同じ参加者が二つの条件で別日にバーチャルサッカーを最大3時間プレーし、条件の順序は無作為に決めました(図1A、B)。

気分や疲労感は質問票などで参加者自身に評価してもらいました。
実行機能を調べる認知課題と唾液採取も測定の各時点で行いました。
心拍数・瞳孔径は連続記録し、血糖の指標となる間質液中グルコースは15分ごと、ゲームパフォーマンスは試合ごとに記録しました(図1B)。
認知課題にはフランカー課題注3)などを用いました。
この課題では、周囲の矢印に惑わされず中央の矢印の向きを答えます。
妨害刺激による反応の遅れ(干渉時間)と回答の正確さ(正答率)を測定しました。
認知課題は、プレー中の姿勢にかかわらず全員が同じ座位で行いました。

実験1では、立位で序盤に活力が高まり(図2B)、気分の快さを示す得点も通常座位より高くなりました。
シュート数は30・60分時点で通常座位より多くなりました(図2F)。
フランカー課題では、立位で15分間プレーした時点の干渉時間が開始前より短くなりました(図2D)。
また、通常座位より心拍数が高く、瞳孔径が大きくなり、最初の30分には唾液中のコルチゾール・テストステロン濃度も高くなりました。
コルチゾールとテストステロンは、姿勢に伴う身体の反応を調べる指標として測定したホルモンです。
一方、60分時点では、立位は通常座位より疲労感が強く、干渉時間も長くなりました(図2C、D)。
立位の正答率には有意な変化はありませんでした(図2E)。
通常座位では10人全員が3時間プレーを続けたのに対し、立位では5人が疲労または脚の不快感で途中中止しました(図2A)。
短時間の利点と、長時間続ける上での課題が明らかになりました。

実験2では、前傾座位の方が後傾座位より活力が高く(図3A)、15分時点のシュート数(図3E)やパス数も多くなりました。
疲労感は終盤に強まりましたが、前傾座位と後傾座位の間に有意差はありませんでした(図3B)。
また、60分後のフランカー課題の干渉時間は、前傾座位の方が短く、妨害刺激の影響が小さいことが分かりました(図3C)。
一方、180分後の正答率は前傾座位で開始前および後傾座位より低くなり、後傾座位では、開始前からの有意な低下は認められませんでした(図3D)。
両条件とも15人全員が3時間プレーを続けました。

以上から、姿勢を支える環境によって、序盤のゲームパフォーマンスや実行機能、長時間のプレー後の認知課題での回答の正確さに異なる特徴が現れることが分かりました(図4)。

【今後の展開】
本成果は、活動の目的や時間に応じて姿勢を支える机・椅子の設計につながります。
前傾座位は、立位の短時間の利点を一部備え、座ったまま活力や実行機能を高める姿勢として、後傾座位は長時間のプレー後も認知課題での回答の正確さを支える姿勢として活用できる可能性があります。

今回の研究では、プレーの途中で姿勢を切り替える効果や、最適な切り替えのタイミングは検証していません。
今後はこれらを検証するとともに、若年成人男性以外の参加者や競技選手、異なるゲームにも対象を広げる必要があります。
こうした研究を通じて、eスポーツに加え、学習や仕事などのデジタル活動時の認知パフォーマンスと健康の両立を目指す環境設計への応用が期待されます。